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Resplendor

6/10/2018

 
ミナスジェライス州からエスピリトサント州に用事で行った時の珍道中です。
僕の住むベロオリゾンテからは、1日に1本の電車しか出ていませんでした。
15時間の旅です。
行く時は少しお金を払い、エアコン付きの車両に乗りました。
帰りは出発前にチケットを買えばいいか、と安易に考えてました。
でも、駅に着いたら早朝6時だと言うのに、長蛇の列でした。
時間がないのでとりあえず、普通の車両のチケットを買うしかありません。
​まあ乗ってから変えてもらえるだろう、と安易な思いで出発しました。

その前日はほとんど寝てなくて、疲れ果てていたので、早速寝ようと思ったのですが…
座席が木製で、硬くて直角な背もたれで、これじゃ眠れんと思いました。
しかも窓は全開なのに、暑い…
良くないことに、その列車は鉱物を運ぶので、外から粉塵のようなものが思い切り入って来ます。
ちょっと積極的に息をしたくない感じ。
その上、多分教会の若者グループか何かの団体が、すぐ近くで騒ぎまくっている…

「ガマンだ。ここは日本じゃないんだ」

しまいにゃギター弾きながら、歌って盛り上がってしまい、手がつけられない状態でした。

「ブラジルらしくていいじゃないか」
​

普段ならポジティブに捉えてやろうとする僕ですが、寝不足のため、気分が悪くなりました。
おまけに、盛り上がって汗ばんだ彼らの体臭も風に乗って漂って来ました。
本格的に辛くなってきました。
「これを15時間堪えなければいけないのか…」

真剣に自信がなくなって来ました。

「ゲロ吐いて醜態を晒すのか?」

悪臭に弱い僕は、嫌な想像をし始めました。
すぐ後ろには、来る時に乗った、エアコン付きの車両が見えます。そう、すぐ隣の車両だったんです。
でも、遮断されていて渡る事はできず

「きっと指定席料金を払えば変えてくれるだろう」
​

という考えが甘かったと分かりました。
でも、どうしようもなくなって、次の駅で聞いてみる事にしました。
ホームに降りて、すぐ後ろの車両のスタッフを探しました。
でも、ポルトガル語が話せないからか、怪しがれてしまい、何を言ってもただ

「Não, não」

を繰り返すのみです。
そんなやりとりをしてる間に、笛が鳴りました。
そして戻ろうとしましたが、無情にもドアが閉まり発車しました。

「しまった…」
​

そこは無人駅、僕はそこがどこだか知らない。
まだベロオリゾンテまで、三分の一ほどの距離にも達してない事は解っていました。
無人駅から外に出ると、道路は舗装すらされておらず馬が歩いている。

「やばい、何もない」

商店らしきものも見当たらず、困りました。
電車は明日まで待たないとありません。

「チケットを買うくらいのお金はあるにしても、一泊するお金は無いかもな。しかもクレジットカードを使える所は無いだろう。そもそもここにホテルなんてあるのか?」
​

などと色々不安になって来ました。
​そこで思いついたのが
「そうだ、ここからヘスプレンドールは近いかもしれない。そこまで行けたら、誰か助けてくれるかも」
​

以前、ヘスプレンドールという小さな街に一週間滞在し、演奏した事があったんです。
カーニバルの期間中に路上ライブするという、過激な企画でした。
とりあえず歩いていたら、うす汚いバーの前に座っているおじさんたちを発見しました。
​

「バス停はどこにありますか?」

「ここからもう少し歩いたとこにあるぞ」

「ヘスプレンドールってここから近いですか?」

「そうさのう、一時間半くらいじゃ」
​

「オブリガード、セニョール。チャオ」
言われた通りに行くと、バス停がありました。
本当に小さなバス停です。着くと、何人かすでに待っていたので尋ねました。

「次のバスはヘスプレンドールに寄りますか?」

「寄るよ」
​

安堵感が押し寄せました。これで何とかなるだろうと…
本当に何も無いところでした。凶悪犯罪は多分無いだろうけれど、やはりブラジルなので怖いです。
数時間すれば、とりあえず知っている人がいる所にいけると分かっただけで、安心しました。
バスは何も無い草原を走り、ついにヘスプレンドールにつきました。
​向かった先は…
以前一週間滞在した時に、宿泊させてくれた人です。
ホナウドというお医者さんの家を目指しました。
小さな街という事もあり、信じられないけど、家までの道を覚えていました。
門でブザーを鳴らしました。

​「どうしよう、なんて説明しよう…」
​

突然不安になりました。
いくら以前泊めてもらったとはいえ、アポなしで突然訪問して。なんて言えばいいんだろう?
ほどなく奥さんのホザンジェラが出て来ました。
​

「まあ、ヒトシじゃない!どうしたの?」

「実は…」
​

ポルトガル語で一生懸命、上手く言えないけど説明しました。
すぐに僕の状況を察知し、話を遮り、強くハグしながら
​
「あらなんて可哀想に…いいからウチに泊まりなさい」

​僕は助かりました。
それから数日泊めてもらい、また友好を深めました。
以前来た時にマンゴを死ぬほど頂いたんですが、凍らせてたマンゴがまだ残っており、ジュースを沢山飲んだのを覚えてます。
​

お医者さんの家だけあって、女中用の小屋があり、そこに前回も滞在しました。
プールが隣にあり、子供達と一緒に遊びました。
ホナウドの友達の、スーパーマーケットの店主も僕を招いてくれて、シュハスコをしてくれたり…
彼の家で飼っている鶏を屠ってくれたのは、新鮮すぎて少しショックでしたが…
​

​そして、そこの教会の人たちとも再び交流を深めました。
日曜日にはその教会のバンドと演奏し、歌いました。
どこに行っても、日本語で何か歌って、と頼まれるので、僕は上手い下手関係なく歌います。

こんな感じで楽しい滞在になりました。
そして、ベロオリゾンテに無事帰りました。
この時ほど、ブラジル人の温かさを感じた事はありません。
ミナスジェライス州の田舎では、こういう人ばかりだそうです。
後になって色んな人と話して知りました。
アメリカ時代に受けた心の傷は癒された、とこの数日を通し確信しました。
僕は人間不信に陥っていました。でもブラジルに来てから、人の温かさに触れ、すでに癒しを感じていました。
そしてこの事を通して、やっぱり人はこうあるべきだ、と立ち直る事ができました。
僕自身がこんな温かい人間か?と言えばそうではありません。
でも、理想としてそれを目指すべきだ、と再び思えるようになりました。
電車に置いてけぼりにされた時は、一体どうなるか?と一瞬真っ白になりました。
でも、この事は思いも寄らぬ、僕の心の癒しの為のセットアップだったんです。
神様は僕を愛するあまり、このように素晴らしい人たちを与えて癒して下さいました。

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