チェイサーズは落花生がタダで食べ放題でした。
そこらじゅう殻が散らかりっぱなしです。
ケニー マンスのカントリーソングを聴きながら、7upを飲みながら、ひたすら豆を食べながら、宮木さんとの会話も弾んでいた頃です。
視界に入るキャシーの様子が気になりました。
同席の男がしつこく彼女に近づいているを見て、口説こうとしてるのが分かりました。
でも彼女はその気がありません。
迷惑そうな顔をしてました。
でも男はいかにもアメリカ人らしく、お構いなく押しの一手でした。
酔ってたかも知れません。
次第にケニーの渋い歌声に集中できなくなり、困りました。
「おい、たっちょ(宮木さん)あれ見ろよ。嫌がってるよな」
「そうだね」
「どうしたらいいかな…」
明らかに嫌がっているキャシーを助けてあげたかった。
でも正面から行くのもなぁ、ちょっと怖い…
まあ男と女の事だしなぁ、彼女も一人で解決すべきだよなぁ。
それに日本から来た親友とのせっかくの時間だし、とかぐるぐる考えました。
宮木さんと話しながらも、混乱してきました。
そんな矢先、チャンスが訪れました。
男が席を立ち、トイレに消えて行きました。
一瞬だけ躊躇しましたが、僕はキャシーの元に行き
「ヘイ、あいつ嫌な奴だよね。よかったら僕のテーブルに来ない?」
キャシーも一瞬だけ考えましたが、立ち上がり、僕のテーブルにジョインしました。
英語もまともに話せない、イケてない2人の日本人と一緒になるのも抵抗があったのかも知れません。
程なく、男が戻って来ました。
キャシーが僕のテーブルで楽しそうに話している姿を見て、一瞬残念そうな顔を見せましたが別のテーブルに行きました。
大人しく諦めてくれてよかったです。
キャシーとは世間話をしました。
「TGIFで働いてるの」
「何それ?」
「Thank God it's Fridayっていうレストラン。知らない?」
そう言って、彼女は名刺を渡しました。